細く、長く。持続力を養う精進の道
2013年06月24日
コツコツと続ける努力が本当の強さを築く
仏教の教えの中に、〝精進〟という言葉があります。これは前回お話しした六派羅蜜の一つでもあり、簡単に言えば「たゆまぬ努力を続けること」。ここでもポイントは、継続させることにあります。一時的に爆発させるパワーよりも、毎日コツコツと蓄えた力、またそれを実践した人の方が何よりも強い。常にそうした努力を維持できていると、それが自分のベースとなり、何か大きく状況が変わった際にも冷静に対処でき、正常な状態へ戻ることができます。先の大震災や為替変動に大きく左右されてきた私たちの社会。これからは、そうした厳しい変化の中でもベースとなる暮らしを保つために、一時的でなく持続的な努力が必要だと感じます。
持続力のカギは食にあり
果てしない修行を支える精進料理
精進というと、精進料理を思い浮かべる方も多いかもしれません。修行僧が食すこの料理は、その名の通り、精進を積むための食事です。実はこの料理、生きるものを殺してはならないという不殺生戒を守るための菜食、という側面もあるのですが、修行を続けるためには欠かせないものなのです。肉や魚などの動物性タンパク質は、主に瞬発的な力を生み出すエネルギーとなるものです。パワーを得ると、体内にはアドレナリンが分泌され、心には色々な欲が生じてきます。逆に、精進料理に使われる野菜や豆類、穀類が持つ植物性タンパク質は、ゆっくりと体内に吸収され、持続的に力を与えてくれます。余計な欲を抑えて静かな心を保ち、なおかつ細く長く厳しい修行を続けていく力を得るために、植物性タンパク質を摂取する精進料理が生まれたのです。
-中略-
「食べることは、生きること」と良く言いますが、食は人間の根本だと思います。食生活が崩れると、心も体もすべてが崩れてしまう。もちろん外食の楽しみや動物性たんぱく質を含めた栄養バランスも大切ですが、ちょっと心や体が疲れたなと感じた時には、食生活を見直して野菜を中心にした食事で身体を労わってみるのも、ひとつの方法だと思います。
ーお寺のある暮らしー風だよりvol.118 より 文 法福寺住職 西部元照